ミセル中での反応

Fe-Catalyzed Reductive Couplings of Terminal (Hetero)Aryl Alkenes and Alkyl Halides under Aqueous Micellar Conditions

JACS, 2019, early view

UC Santa Barbara、Lipshutzsらの報告です。ミセル中に反応剤を取り込ませることで、単純な液相よりも反応効率が上昇するという研究になります。

私自身は不勉強でこの研究を知りませんでしたが、Lipshutzsらは以前よりミセルを用いた水中反応を検討されているようです。ただこれまでは通常の有機溶媒で進行する反応を水系に持ち込んだものでしたので、掲載ジャーナルのレベル(評価)もそこまで高いものではなかったようです。

今回の報告では、FeとZnを組み合わせた系を利用して、単純アルケンとアルキルハライドのミセル中での還元的カップリングを報告しています。

メカニズムとしては、Fe(III)がZn(0)により還元されて低原子価のFe(I)になり、これがアルキルハライドを還元してアルキルラジカルが生成します。このアルキルラジカルがアルケンへと付加したのち、再度生じたアルキルラジカルがZnにより還元されてアルキル亜鉛になり、これのプロトン化により完結となります。FeはFe(II)になりますが、亜鉛により還元されてFe(I)に戻り触媒として回転します。

論文の主張の通りC(sp3)-C(Sp3)を作るのは簡単でないですし、反応としても新規性があっていいのですが、論文によるとミセルなしの水-CH3CN系でも反応は進行するようなのでミセルは無理やり絡めた感が・・・ミセルがなくてもJACSに掲載されるかも?

有機分子を水に加えると油滴として局所にあつまり、濃度を高めることができるのは濃縮効果として昔から知られているので、ミセルの科学はこれとの明確な差別化が求められるのですが、現状はうまく示せていないように感じます。

ミセルでしか実現できない反応が見つかれば、より優れたケミストリーになるので、今後の発展に期待したいと思います。

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