核酸医薬が実現するテーラーメイド医療

日経バイオテクにとても興味深い記事が掲載されていました。(有料記事

詳細は元記事をお読みいただきたいのですが、かいつまんで紹介すると、アメリカのある遺伝子疾患の患者さんに対し診断から僅か一年の間に新薬が創製され投与が完了したのです。

ゲノム解析の結果新奇の変異であることが分かったため既存の手法は使えず、SNSで助けを呼びかけたところ核酸創薬の研究者が手を上げそこから数ヶ月で投与可能な品質の化合物を作り上げたそうです。

こう言う記事を見ると、やはりアメリカの臨機応変さには感心させられます。きっとこの薬剤はベストの化合物ではなかっただろうし、記事にもある通り化学純度も高いとは言えません。当然あらゆるリスクが想定されます。それでも今まさに命の危険が迫っている幼い命がある中で、投与にチャレンジしない理由はないですよね。残念ながら現時点で劇的な薬効が見えた訳では無さそうですが、何か出来る事を、と言う両親の思いを行動につなげることができただけでも一つ創薬研究者の貢献があったと言えるのではないでしょうか。

また別の視点から見ると、少なくとも核酸創薬では新奇変異の発見から治療まで1年で出来てしまうことがわかりました。では薬を出せない製薬会社は毎日何をしているのか?とてつもなく無能なのか?となりますが、決してそうではありません。

今回のケースは非営利だから成立したのです。製薬会社は倫理観とビジネスの両立を求められる難しい立場にあります。当然苦しんでいる患者さんを1人でも救いたいと思って研究を進める訳ですが、一営利団体としてビジネスを成立させ、社員の給料を払うことも必要です。世界で1人の患者さんにしか適応できない薬を生み出すために莫大なリソースを費やすことは現実的では無いのです。

ちなみに、こういったギャップを埋めるためのアクションとしてアメリカでは寄付を財源とする疾患財団の活動が盛んです。ベンチャーキャピタルもそうですが、チャレンジするものに対するサポートが厚いのもアメリカの良いところですよね。

製薬会社も少し前から希少疾患に取り組むところが増えていますが、これらにはかならず事業性の課題がセットで付いてきます。希少疾患創薬をうまく回すためにどういった仕組みが必要かについては引き続き考えていかねばなりません。

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