AI創薬の可能性

大日本住友製薬とExscientia社から、創薬にAIを活用してごく短期間で開発候補品を取得したというプレスリリースがなされました(リンク)。発表によるとセロトニン5-HT1Aを標的とした低分子化合物を開始からわずか1年で開発品まで仕上げたとのことで、文章にもある通り順調なPJで4年くらいはかかると思うので、確かにめちゃくちゃ早いです。

一方で、気になるのが発表にやたらと出てくる大日本住友製薬が有するモノアミンGPCR創薬の深い経験値という文言。歴史はよく知りませんが、調べてみるとセディールという5-HT1A作動薬をすでに上市しているようです。つまり社内化合物ライブラリーには5-HT1A作動薬の誘導体がわんさかある状態から始めていると思われます。

・・・これって、かなり発車台高いですよね。確かにモノアミン系創薬は複雑で、セロトニン受容体サブタイプだけでなくドパミン受容体などといった他の受容体とのバランスもあるので難しいとは思いますが。AI関係なく普通にやっても結構早かったのでは?

と、ちょっと斜に構えた見方をしてしまったのですが、別にAIの有用性を否定しているのではありません。ただ4年掛かってたのが1年で!というのは言い過ぎでしょと言いたかっただけです。

このプレスはAIとメドケムの現状の関係性をよく表していると思っています。AIというのは既存の情報を高速で集約・解析して過去の経験からリーズナブルな打ち手を示すのが得意です。すなわち、DSPの5-HT1Aのように、膨大なSARデータがある(はず)ところはもっとも強みを示せるところなのです。逆に言うと新規性の高い創薬標的の場合、SAR情報がないのでなかなかうまく動けないのです。このあたりがメドケムAIの現状と理解しています。

上にも述べたようにモノアミン系創薬はセロトニンやドパミンなど標的系が複雑でバランスが重要であり、かつDSPに限らず世の中に膨大な過去知見があります。すなわち、AIによる解析土壌がある + バランスを調節すれば画期的な新薬につながりうる、 ということでAIを使うに非常に適したフィールドです。ここに目をつけた大日本住友製薬さんの戦略が素晴らしいと思いました。なんでも無理やりAIではダメで、人と同じで適材適所が重要ということですね。

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