PROTACフォロワー②:PHOTAC

前回に引き続きPROTACフォロワーを紹介します。今回はPHOTACです(PHOtochemically TArgeted Chimera, 文献)。これは正直誰かやるだろうなー皆が思っていたような研究で、有機合成界隈で大流行中の光化学を組み合わせたものです。コンセプトとしては、光照射により活性化するPro-PROTACを準備し、投与後外から光照射することで照射した部位でのみPROTACがワークするという内容になります。照射部位以外では不活性型であるため、目的の部位以外での副作用を抑制できる点がメリットですね。

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は ja9b06422_0006.gif です
JACS誌Abstractより。別文献なので少し違いますが

光応答性の構造としてアゾベンゼンを選択した点が素晴らしいですね。アゾベンゼンのE/Z光異性化を活用し、コンフォメーション変化によりポケットとの親和性をスイッチさせています。異性化反応のためかなりの変換効率が期待でき、副生成物も全くないので生体適合性の高いプロセスである点も秀逸です。いや、Trauner先生さすがですね。もともとエッジの効いた全合成で鳴らしていましたが、Chemical biologyの分野でも変わらず活躍されています。

上記文献より
上記文献より。390 nm照射時のみBRDのKDが起きている。

この文献に引き続き、違う形のPHOTACがJACS誌に報告されました(文献、上記のPHOTAC概念図の引用元です)。これはBRD4-CRBNにジメトキシニトロベンジル基という光照射により脱保護できる保護基を修飾した化合物になります。こちらの方が素直なデザインですが、脱保護されたあとの残骸がかなり気になりますし、副反応も進行すると思われるので課題は多いです。

これらは概念としてはPhotodynamic Therapy(PDT)と呼ばれるもので、光を組み合わせて化合物の作用をコントロールするという取り組みです。ただPDTには本質的に光透過性の課題があります。390 nmのような短波長光は全く透過性がないので患部まで到達しません。もっと長い波長の光であれば患部までいきますが、光のエネルギーが小さくなっていくので化合物を変換するのが難しくなります。よって現状PHOTACはin vitroツール or 皮膚病変の治療が限界になっていますが、光化学のブレークスルー次第では大きく進捗する可能性を秘めていると思います。

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