PROTACフォロワー④:opto-PROTACとbioPROTAC

調べているとPROTACフォロワーがどんどん出てくるので、引き続き紹介していきます。

まず一つ目のopto-PROTACです(論文)。コンセプトとしては、光照射により脱保護可能な保護基を付けたPROTACをデザインし、光が当たった時にだけ活性体になることで、作用部位をコントロールできて毒性と薬効の乖離が期待できるといったところです。保護基としてはジメトキシニトロベンジル基を適用しています。具体的なデータとしては既知のBRD4およびALK degraderのopto-PROTACを調整し、実際に光照射によって分解誘導活性が発現することを確認しています。

と、なんかデジャヴなのですが、この論文実は以前紹介したPHOTACと全く同じ内容が別の研究室から報告されたものになります。使っている保護基も全く同じなところが恐ろしいですね。ちなみに前回のPHOTACの時も2論文紹介しており、一報目の方はアゾベンゼンの異性化を活用したスマートな系だったのですが、こちらの論文は今回のopto-PROTACと同じ号のScience Advanceに掲載されています(前回はPreprintの状態でした)。この三論文は投稿日が1週間以内に収まっており、PROTAC関連研究の激しさを感じさせます。

続いてbioPROTACです(論文)。通常のPROTACの取得には少なくともPOI(Protein of interest)の低分子バインダーが必要であるため、既知のバインダーが無い場合そこから始める必要がありました(以前の記事参照)。そこで著者らは、内在性タンパクリガンドがある標的で低分子バインダーが無い場合でも、この内在性タンパクそのものとE3リガーゼのfusion proteinを調整すれば、PROTACのようにワークすると考えました。この考え方を彼らはbioPROTACと名付けました。

bioPROTACはタンパクなのでそのまま創薬モダリティとして考えるとデリバリーや膜透過性の面で課題があります。一方でツールとしての利用を考えた時、POIとE3リガーゼの相性をいち早く確認できるというメリットがあります。PROTACの場合、リンカー結合位置やリンカーの長さなどが成否に影響するため「薬効が無い=E3とPOIの相性が悪い」という判断はできません。ここにbioPROTACのデータがあれば、より精度の高い判断が下せるということです。

実はこのbioPROTAC、化合物としては以前から知られているそうです。彼ら(MSDの研究者)は、このfusion proteinをPROTACと関連づける発想を報告したということになります。研究領域の進展に伴い、過去の知見に新たな視点を付加して再発掘するのは重要な研究テーマ設定手法の一つですよね。

bioPROTAC自体をAAVに搭載して創薬活用するなどのアイディアも考えられますし、いろいろな面で頭に入れておくべき提案かと感じました。

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