PROTACフォロワー①:LYTAC, AUTAC

PROTACで示された通り、生体内の機構を活用して狙ったタンパクを分解する手法はとても有力な創薬アプローチです。二つのリガンドをくっつけるだけで生体のマシーナリーを簡単に動かせるのは非常に驚きであるとともに、Biology = 夾雑なものという先入観を打ち砕いて、生命現象だって大元は全て化学反応で制御されているのだからケミストの主戦場なんだ!と昨今居心地の悪い思いをしているケミストたちをモチベートしてくれたのです。

ということで、一旦いけんじゃねとなったら急にみんな始めるのはどこでもある話で、PROTACについても「生体内の分解機構ってユビキチン-プロテアソーム以外にもあるよね?」というシンプルな発想から次々と関連報告がなされています。

まずは細胞内タンパク分解のメインプレーヤーであるリソソームを活用したLYTACです。(リンク

リソソームは様々な分解酵素を蓄えているのですが、これらはマンノース-6-リン酸(M6P)修飾をされた上でM6P-Rに認識されリソソームへと集積します。よってM6Pをぶら下げれば、色んなものをリソソームにお届けできるのです。M6Pを用いたリソソームターゲッティング手法は以前より知られているので、あとは適切なリガンドと組み合わせるだけ。

LYTACのイメージ図(上記論文より)

 論文では抗EGFR抗体であるセツキシマブ(ctx)をM6P修飾した化合物で、EGFR分解誘導作用を確認しています。

・・・書いていて思ったのですが、もともと抗体には抗原をリソソームに連れて行って自爆する作用があるし、もっと言えば中外製薬が開発したリサイクリング抗体(参考)はほぼLYTACと同じ作用を有するのではないでしょうか。低分子リガンドを用いたLYTACが報告されるともう少し印象が変わるかなといった感想を抱きました。

リサイクリング抗体(上記リンクより)

次はAUTACです(リンク)。字面でわかりそうですが、こちらはオートファジーを活用した手法になります。AUTACについてはこちらのサイトで著者本人が解説されていますので併せてご参照ください。

文献abstractより

オートファジー誘導因子としてs-グアニル基を用いていますが、これは著者らのグループが見出した8-ニトロcGMPを介したs-グアニル化によるオートファジー制御のメカニズムを活用したものです(文献解説記事)。文献ではMetAP2およびFKBP12のバインダーとs-グアニルシステインをリンクさせたAUTACを用いた各タンパクのノックダウン作用を確認しています。

このグアニル基が何に認識されてオートファジーを誘導しているのかまだメカニズムが分かっておらずブラックボックスな面も多いですが、認識タグがそれほど大きくないので、創薬応用も可能なコンセプトではないでしょうか。PROTACと同様AUTACにも標的の得意不得意があると思うので、標的に合わせてPROTAC、AUTACを使い分ける日が来るかも??


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